2016年5月25日水曜日

義母の思い出


「桃一枝 添えて菱餅 ()に持たす」

これは、先日91歳で旅立った義母が作っていた古い俳句である。
今もこの風習があるのかどうかは知らないが、私が嫁いだ30年ほど前までは、自家製の大きな雛餅を嫁の実家に持たせていた。
直径が30cm程もある菱餅を実家の床の間に供え、母の心尽くしの料理を皆で囲み、早春の穏やかな一日を過ごしたのが、まるで昨日の様に思い出される。

しかし、その菱餅を見て、笑みを浮かべていた父や叔父はもういない。
お返しにと、その菱餅を薄切りにして干して、「雛あられ」を作ってくれた母もやがて米寿を迎えようとしていて、そんな気力も体力ももう無い。

そして何よりも、「よろしゅう言うてはいよ」と、大きな菱餅と温かい笑顔で送り出してくれた義母も、旅立ってしまった。

「年を取ることは失くしていくこと」と聞いたことがある。
慈しんでくれた人、当たり前の様にできた事も少しずつ姿を消して行く。


それだからこそ、今のこの瞬間の小さな幸せを大切にと、この句が教えてくれている様に感じるこの頃である。