花嫁衣裳
古い欅箪笥の引き出しを開けると
私は一気に明治時代に引き込まれる
そこにはおよそ百二十年を過ぎた
古い花嫁衣裳が眠っているのだ
細かい鶴亀の刺繍が散りばめられた
白無垢の振袖と打掛が
それから
真っ赤な長襦袢が燃えてえいる
ひっそりと眠っている
今ではしみじみと変色してしまった白無垢を
想像力というツールで
元の純白に戻してみる
そして
ふんわりそれを長襦袢の上に重ねてみる
すると聞えてくる
華燭の宴の賑わいが
酒を酌み交わす男達の
声高な笑い声が
十代の花嫁の表情が見えてくる
恥じらいと期待と不安の交錯する
まだ十代の幼き花嫁の表情が
早く嫁いで子を成す
その時代の女の王道を
歩く自分に何の疑いも
なかったことだろうか
横に座る
羽織袴の若者に
視線を投げかけながら
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