「茨木のり子」(1926-2006)…昭和の激動期をその余りある才能と研ぎ澄まされた感性で駆け抜けた詩人です。
その詩は今も尚、力強くも美しく、私達に勇気と物事を観る目を教えてくれています。
まず、この詩は「なるほど」と反省させられます。
*自分の感受性くらい*
(詩華集「おんなのことば」より)
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
次の詩は特に気に入りました。
私も一人でいることが結構好きな方なので、時々「私って変?」とか思ったりもするんですが、「一人でいる時に寂しい人は、二人でいるとなお寂しい」そうなので、私も孤独に悩む事が無いのはそのせいかな、と勇気付けられました。
*一人は賑やか*
(詩華集「おんなのことば」より)
一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな森だよ
夢がぱちぱち はぜてくる
よからぬ思いも 湧いてくる
エーデルワイスも 毒の茸も
一人でいるのは 賑やかだ
賑やかな賑やかな海だよ
水平線もかたむいて
荒れに荒れっちまう夜もある
なぎの日生まれる馬鹿貝もある
一人でいるのは賑やかだ
誓って負けおしみなんかじゃない
一人でいるとき寂しいやつが
二人寄ったら なお淋しい
おおぜい寄ったなら
だ だ だ だ だっと 堕落だな
恋人よ
まだどこにいるのかもわからない 君
一人でいるとき 一番賑やかなヤツで
あってくれ
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