2021年12月24日金曜日

「Be yourself」 と「おのがじし」

 「おのがじし」と ”Be yourself” (ビー ユアセルフ)

             (2021年、すぎなみ12月号に寄稿)


私にも自分を励ましてくれる言葉が幾つかある。


その一つは「ビー ユアセルフ」(Be yourself,自分自身であれ)である。「自分の考え、価値観を大事に」ということで、これまで迷った時はこの英語に大いに励まされてきた。

迷う背景には日本文化独特の、全体の和、集団の中の自分、自分を前に出さない、そんな「全体」が「個」よりも前に置かれることが多いからだろう

か。

ところが先日、短歌の勉強をしていて「おのがじし」という古語に出合った。これは「各自」、「それぞれ」という意味で、源氏物語に使われているそうだ。現代語で言えば「個性」であるという。

こんな言葉が古来よりあったとは、本当に新しい発見であった。


よく「個性を大事に」とは言われるが、実社会でそれを前面に出すのは今の日本では難しい、そう実感しているのは私だけではないだろう。


英語圏の「人と違う考えを持つこと」、「自分の意見を持つこと」、そんな「個」に根差した事が尊重される文化とは大いに異なる。

そう言えば、英語では主語が必ずあるが、日本語には通常はない、その理由についても同じ様な事が言えると聞く。


もちろん、これはどちらが良くて、どちらが悪いかではなく、ただ違うのであるから、それを受け入れなくてはならない。


でも、短歌の世界では本来、自分の「個性」を見つけて育てていくことが要求されており、特に現代短歌では勝負どころだそうである。「おのがじし」が大事なのだ。

そういう世界は、英語の影響からか、全体を自分の前に置くのが苦手な私にとって、大いに勇気付けられる気がする。


個性を大事にしてくれる短歌の世界で、想像力を駆使しながら、自分の「おのがじし」を少しずつ創り上げて行きたいと願う昨今である。

   

ひと口に稲穂と言えど立ち様(ざま)は

              向きも重さもおのがじしなり 


0 件のコメント:

コメントを投稿

どうぞお気軽にご感想なり、ご意見なりを
お聞かせくださいませ。