先週の「南米のクリスマス」のクッキング交流では、焼きたての美味しいエンパナダをお腹一杯いただいて、至福の時を過ごすことができました。
でも、このエンパナダも、大航海時代の過酷な歴史を今に伝えているのです。
料理を指導してくださった、スティーブさんにお話を伺いました。
私)先日はおいしいエンパナダをありがとうございました。ところで、「エンパナダ」って、どう言う意味があるのでしょうか?
スティーブ) 私も楽しい時間を過ごすことができて、ありがたく思っています。「エンパナダ」の意味ですが、スペイン語では「エンパナール」と言われます。「エン」は「中」、「パナール」は「パン」と「ロール」がくっついて発音されてるんです。英語に訳すと「roll in dough」と言う意味なんです。
私)そう言えば、日本語の「パン」はスペイン語でも「パン」なんですよね。スペイン語をそのまま使ったんですねー
スティーブ)そうですね。ところで、このエンパナダは南米では全ての国で、クリスマスの頃作って食べるんですよ。
私)そのようですね。ところで、このエンパナダはいつ頃、スペインから南米の方に伝わったのでしょうか?
スティーブ)記録によるとスペインが南米にやって来たのは、約500年前だそうです。スペインだけでなく、フランスやドイツ、イタリア、ポルトガル等からも多くの移住者がやって来たのですが、その90%は先ずアルゼンチンに住み始めたのです。
私)スペインの植民地とか聞くと、私達はすぐ「メキシコ」や「ペルー」を連想しますが、アルゼンチンが最初だったんですね。
スティーブン)そうですよ。今でもアルゼンチン南部に行くと、フランスやドイツ風の建築が立ち並び、住民も白人が殆どで、ヨーロッパそのものです。言葉もイタリア語やフランス語がけっこう使われてますよ。
アルゼンチンの次に植民地化したのはチリですから、チリも本当にヨーロッパそのものの国ですよ。
私)そうなんですね。
これは、ペルー出身の方から聞いたんですけど、アルゼンチンやチリでは原住民の殆どはスペイン軍に殺されたそうですね。
スティーブン)それは本当ですよ。アルゼンチンやチリでは原住民の人口は2~3%位しかいません。原住民を一掃したと言っていい程、殺戮したんですから悲惨な歴史です。
私)でも、ペルー等の南米北部にある国々では、原住民もそんなに殺さなかったみたいですね。原住民を殺しすぎて、労働力が不足してきたのが原因だそうですね。
スティーブン)はい、それで方向転換したみたいです。労働力不足を補うために、原住民だけでなく、アフリカからたくさんの奴隷も連れて来られました。
私)「コーヒールンバ」と言う歌は私も好きなんですが、あれは南米のコーヒープランテーションで働く黒人奴隷の歌で、陽気な曲とは裏腹に、歌詞は哀愁が漂っていますね。
スティーブン)本当ですね。
私)ところで、先日使われていた大きな「生地メーカー」はアメリカ製だそうですね。日本で買われたんですか?
スティーブン)いえ、いえ、日本で買うと何でも倍近い値段になりますので、インターネットでアメリカから取り寄せました。送料を入れても、日本で買うよりグンと安いですからね。
私)その機械を作っている会社には長い歴史があるのでしょう?
スティーブン)そうなんですよ。「キッチン エイド」と言う会社ですが、この会社の歴史は1800年代の終わり頃に遡り、あるアメリカ女性が創業した会社なんです。
私)1800年代の女性起業家ですか、凄いですね!
スティーブン)その頃、ある裕福な奥様が、自分の召使い達がよく皿を割ってしまうのに腹を立て、「皿洗い機が欲しいわ。誰も作ってくれないなら、自分で作る!」と言って、本当に作ってしまったんです!
私)さすがパワフルですね。
スティーブン)作り始めて7年後には世に出すことが出来たそうです。もちろん最初から家庭に普及したわけでなく、始めはホテルや大きなレストランで使われていただけでした。
一般家庭に普及しだしたのは1950年代になってからでした。
そして彼女は、自分の皿洗い機をもっと生産するために、会社を設立しました。それが「キッチン エイド」の始まりです。
私)「キッチン エイド」は「台所のお手伝い」という意味で、とても女性的な良いネーミングですね。
私も彼女のパワーを見習いたいと思います。今日は楽しいお話、ありがとうございました。
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